TechDAS | Analogue Turntable

究極を超える究極。レコード盤にこれほどまでの情報が刻まれていたのか。

Air Force Zero

Analogue Turntable

ここ数年のオーディオ業界の一つの現象として、アナログプレーヤーが数多く発売されています。 この現象は何を意味しているのでしょうか。ひとつは、フォーマットがデジタルに移行しすぎた傾向への反動ではないでしょうか。特にハイレゾと呼ばれる最新のフォーマットは、初期の段階での音質の影響により、体調まで悪くなったという話を何度も耳にしました。 この頃から一部の熱烈なオーディオファンから、良質なアナログプレーヤーが望まれていました。当社はこのマーケットの動向に注目して、2008年より本格的なアナログプレーヤーの開発に着手しました。

最初の製品は2012年にリリースした Air Force Oneでした。 この製品の開発コンセプトは、現在得られる高性能レコードプレーヤーを、最小限の大きさに設計することでした。 そしてその目的は達成され、当社の予想よりも遥かに多くの愛用者を得ることに成功しました。

当社ではその後現在に至るまでの間に、普及価格帯である Air Force V Premium にまでラインナップを拡充させ、より多くの客さまにアナログソースの真髄をご紹介しております。

これらレギュラーモデルの開発・販売と並行して、現在得られる最高のレコードプレーヤーを発売するプロジェクトを進めておりました。この開発は今までの技術の蓄積に新しい発想を加えることにより、より画期的な製品にすることを目標としていました。開発に数年を要しましたが、遂に究極を超えた究極とも言える Air Force Zero が完成したのです。

開発プロセス

いくつかの制約条件のもとで開発されるレギュラーモデルとは異なり、Air Force Zero の開発には一切の制限を設けるつもりはありませんでしたが、プロジェクトのスタート地点では一応次に示すようなガイドラインを設定しておりました。

1.  製品全体のサイズは、往年の名ターンテーブル EMT927 を超えないこと。
2. 製品を構成する各部分の重量は、我々が設置できる重量の範囲内とすること
3. 10 inch / 12 inch どちらのトーンアームも使用可能とすること
4. ターンテーブルの直径を40cmとすること

最終的に本体の重量はトータル 330kg となりました。これは当初の予想をはるかに上回った巨大なシステムです。

 

技術的特徴 (ドライブモーター)

先ず大きな仕事としてこの製品に見合うドライブモーター探しが先行しました。 相当苦労しましたが偶然有名なドイツの Papst 社製のテレコ用高級シンクロナスモーターを入手することができました。
このことにより、Air Force Zero の開発プロジェクトがスタートしました。そして現在入手し得る最高級のレコードプレーヤーに搭載するために、まずドライブモーターの設計に着手しました。トルクの大きな Papst 製 3相12極シンクロナスACモーターをベースに、フライホイールを搭載したエアーベアリング方式のドライブモーターを開発いたしました。
この開発されたモーターには、以下のような利点があります。

1. 高精度メタルベアリングとエアーベアリングにより面振れが数ミクロン以内の高精密回転体を完成。
2. フライホイール効果による高イナーシャが実現。
3. エアーベアリング効果による高 S/N なプラッター駆動モーターが実現。
4. 新駆動電子回路により、回転精度の高い低振動なモーターが実現。

定常回転では駆動パワーアンプによりサーボ回転を排除した滑らかな回転を実現しています。定常回転を逸脱した時のみマイクロプロセッサーにより回転スピードを制御します。(スタート時または外圧による回転数逸脱時のみ)
上記技術によりベルトドライブ方式では、世界でも類の無い正確な回転精度を実現したレコードプレーヤーが完成しました。

下記にAir Force Zeroのモーター制御回路のブロック図を示します。

 

ドライブシステム

1. 水晶発振器 (Crystal Oscillator )
モーターの回転周波数の元となる基準クロック発振器です。

2. ダイレクト・デジタル・シンセサイザー (Direct Digital Synthesizer (DDS))
入力されるクロックをマイクロプロセッサーの指示で分周するシンセサイザーです。周波数の高いクロックをモーターの回転数に合った低い周波数に変換しています。周波数はほぼ任意の値を出力できるため、細かい回転数制御が可能となります。

3. トルク切り替え回路 (Torque switching circuit )
起動時やプラッターの回転数を変える時、モーターの回転トルクを上げて早い時間で起動させるためのモーター電圧を切り替える回路です。

4. 三相生成回路 (3-phase signal generator circuit )
3相モーターを駆動するために、正確に120°進相させたモーター駆動用3相交流を生成させる回路です。

5. モーター駆動アンプ (Motor driving amplifier )
3相の各相毎に3台の150Wクラスのパワーアンプでシンクロナスモーターを強力に駆動します。

6. シンクロナスモーター (Synchronous motor)
3相の周波数に同期して回転するモーターです。通常はコンデンサで位相のずれた交流をモーターに供給し回転させますが、コンデンサの経時変化や容量誤差等により正確に位相のずれた交流を供給できません。位相がずれると回転トルクが下がり、振動が増えてしまいます。

7. センサー (Sensor)
プラッターの回転数を検出しマイクロプロセッサーに回転数情報を送ります。

8. マイクロプロセッサー (Microprocessor)
モーター駆動系のコントロールを行い正しい回転スピードを維持するように制御しています。

 

モーター回転制御方式

回転スイッチを押すと、あらかじめマイクロプロセッサーに記憶した回転数に対応した周波数が DDS (Direct Digital Synthesizer) に設定されます。この時モーターは、ハイトルク状態で回転します。 センサーからの回転スピード信号と目的の回転スピードとの差を計算し、差分をDDSに送って正しい回転スピードに制御します。
この時ディスプレイの表示は “LOCK” の点滅となります。 プラッターが正しい回転スピードに到達すると、ディスプレイの表示は “LOCK” の点灯に変わります。

同時にマイクロプロセッサーは回転トルクをLOWモードに切り替え、回転数の確認のみを行い DDSの制御は行ないません。

従ってプラッターは 慣性 + 一定の回転数のモーターの補助で回転を続けます。 何らかの要因で回転スピードがずれた場合、ディスプレイの “LOCK” 表示は点滅します。この状態では、マイクロプロセッサーはセンサーからの回転スピードと目的のスピードの差分を求め、差分のデータを DDS に送り正しい回転スピードに向けてコントロールを行います。

正しいスピードに到達するとディスプレイの “LOCK” は再び点灯に変わり、再び制御を止め 慣性 + 一定の回転数 のモーター補助で回転を続けます。

 

プラッターとシャーシの技術的特徴

= プラッターベース
このターンテーブルの肝は、プラッターベース (重量:35kg、材質:超々ジェラルミン) にあります。 この中心にある部分に枝葉が伸びるようにアッパーパネルが伸び、これにトーンアームが取り付き、サスペンションの機構へと繋がっています。 そのフローティング部分の重さは 5層のプラッターの重さを除いて 100kg、そして5層のプラッターのトータル 120kg が加わって、フローディング部分の重量は 約230kg になりました。 この製品のプラッターベースとフローティングサスペンションの関係は、重心を支点よりもはるか下にする事によりトーンアームとレコード面に影響のある大きな振幅から逃れることを設計の主眼にしています。

= ベースフレーム
230kgのフローティング部分を支えるベースフレームは、100kg の重量のあるSUS (ステンレススティール) を使用し、表面硬質コーティング処理をしています。 表面硬度を上げる事により振動収束スピードを速めています。

= トーンアームベース
特殊な表面硬化処理を施したチタン製が付属します。取り付けが可能なトーンアームは、9インチ、10インチ、12インチです。特殊寸法のトーンアームは除きます。

= 5層のプラッター
5層によるプラッターの効能は異種金属を組み合わせて振動吸収性を高めると共に、その最上部(レコード面に接する部分)には振動吸収性に優れた硬質金属(タングステンまたはチタン)を採用しています。 また、より重要なこととして、この5層のプラッターはディスクバキューム用の空気を利用し、エアーチャッキングされていることです。 それにより、機械的ストレスが加わるネジを使って固定するという事を避けることができました。

= エアーベアリング
120kg 5層のプラッターは 10 ミクロン浮上して回転しています。
このように浮上させる為にプラッターベースの45cm 円周上の加工精度平面度は 8ミクロン以内に仕上げられています。

= サスペンション
サスペンションは各コーナーに合計4個設置されています。
Air Force One と同様に、ドーナッツ状の空気バネにより低周波振動を吸収しています。 4個のサスペンションモジュールは TechDAS独自の設計によるものです。サスペンションの空気は電動ポンプで供給されます。

 

エアーポンプシステム

パワーサプライ / エアーポンプユニット
Air Force Zero では合計3個の パワーサプライ / エアーポンプユニットを使用しています。
Unit 1/3: プラッター浮上用ポンプ / メイン電源 / エアーコンデンサー
Unit 2/3: モーター浮上用ポンプ / モーター駆動用アンプ / サブ電源
Unit 3/3: ディスク吸着用ポンプ / サスペンションチャージ用ポンプ / サブ電源

専用ラック (オプション)

Air Force Zero ラック 本体用 + パワーサプライ / エアーポンプ用
Air Force Zeroの操作性と性能を安定して引き出せる専用ラックを用意しました。オーディオ機器から発せられる振動を速やかに逃し、かつ外部からの振動を徹底的に遮断するという設計思想のもと世界中のオーディオメーカーから大変高い評価を得ているスペインのアルテサニアオーディオ社製の専用ラックです。

2つのラックで構成されます
Rack 1/2: 本体 + 1 x パワーサプライ / エアーポンプユニット
Rack 2/2: 2 x パワーサプライ /  エアーポンプユニット

スペック Technical Specification

ターンテーブル本体+モーター部

プラッターベース

35kg(超々硬質ジェラルミン)

プラッター総重量

104kg(チタン製 第5層プラッター)
121kg(タングステン 第5層プラッター)

第1層 プラッター

40cm 36kg(鍛造ステンレスSUS 316L)

第2層 プラッター

31cm 21.5kg(鍛造ステンレスSUS 316L)

第3層 プラッター

31cm 18.5kg(鍛造 砲金)

第4層 プラッター

31cm 22kg(鍛造ステンレスSUS 316L)

第5層 プラッター

31cm 6kg(特殊硬化処理 チタン)
31cm 23kg(焼結 タングステン)

プラッター総慣性モーメント

16,000kg・㎠(チタン製 第5層プラッター)
18,720kg・㎠(タングステン製 第5層プラッター)

駆動法式

特殊研磨ポリエステル繊維ベルト

駆動モーター

ドイツPapst社製(1000/5001)3相12極シンクロナスモーター

プラッター回転数

33.3 rpm / 45 rpm

ワウフラッター

0.03%以下

ベースフレーム脚間隔

前側 674mm/奥側 722mm/右奥行 442mm/左奥行 461mm

外見寸法

901(W)× 677(D)× 335(H)mm

本体総重量

330kg(本体+モーター)チタン製第5プラッター
347kg(本体+モーター)タングステン製第5プラッター

エアーポンプ/電源/エアーコンデンサーユニット

パワーサプライ(エアーポンプ/電源ユニット)3台構成

ユニットPMS

W430 × D365 × H205 15kg

ユニットPAS

W430 × D365 × H205 13kg

ユニットPVS

W430 × D365 × H205 10kg

付属品

トーンアームベース(チタン製)

メイン用 + サブ用

ディスクスタビライザー

TechDAS Disc Stabilizer Series II 

アクリル製プラッターカバー

オプション用品

ラックA:W905 × D675 × H790

本体用

ラックB:W790 × D610 × H790

パワーサプライ / エアーポンプユニット用